副看護師長 西田周代

実際にやってみるとメンバーへの指導や教育の場面などで思っていた以上の「影響力」の大きさ

看護師経験は20年、そのうち手術室で10年働いています。2年ほど前から院外での管理者研修にも参加していたので「そろそろ管理職を引き受けることになるな」と心の準備はしていました。そして今年(2023年)4月に副看護師長の任命を受けました。これまでも先輩方の姿を見ていたのでやるべきことはわかっていたのですが、実際にやってみるとメンバーへの指導や教育の場面などで思っていた以上に影響力があることを実感しています。手術室での看護には、術中の医師の動きを見ながら次に使う器具(メスやペアンなど)渡す「機械出し」と、患者の介助をする「外回り」の大きく2つがあります。経験を積むと自然とやるべきことがわかっていくのですが、新人、特に新卒者だと全くわかりません。かつては手術室にはある程度他科を経験した経験者が配属されることが多かったのですが、ここ数年は新卒入職後すぐに配属されることがあり、経験に合わせて段階的に指導をしていくマニュアルの作成や見直しの必要性を感じています。

指導をするうえで、経験や勘に基づく「暗黙知」を言葉にして伝えることの難しさと大切さを実感

看護の仕事には、個人の経験や勘に基づく「暗黙知」という簡単には言語化できない知識があります。自分が直接行う場合は、その暗黙知をフルに使って看護できるのですが、指導の立場ではそれを言語化して「形式知」として伝えることが求められます。看護学生は実習の際でも手術室は見学だけというケースも多いので、手術室に新卒配属されたら最初は戸惑いが多いと思います。病棟だとOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で随時指導をしたり、質問を受けることもできますが、手術中はそれも難しく、事前に伝えることも必要です。また、最近は、膝、腰、肩などの整形外科の手術も増えてきています。それに伴う人工関節や解剖整理の知識も必要になってきますのでベテランといえども常に勉強していかなければいけません。患者さんの「地元の病院で手術を受けたい」という要望に応えるために整形外科の医師も増えていますので、私たち看護師もそれに応えられる看護をしています。

多職種と連携し、患者さんの術前不安を取り除くキーマンとなる管理者を目指したい

私が手術前に必ず行っているのは、患者さんが麻酔にかかる直前に「手術が終わったらまた声を掛けますからね」と声掛けをすることです。すると患者さんは、キュッと手を握り返したり、パッと目を開いたりされることがあります。手術って不安なんですよね。それを患者さんは一人で耐えています。手術が終わり拮抗剤を打って、麻酔が切れて意識が戻った時には「手術が終わりましたよ」とこれも必ず声をかけることにしています。それは私が初めて手術室に移動したとき先輩が「手術の直前と直後に患者さんにいちばんに声を掛けられるのは医師でもご家族でもなく、私たち看護師なんだよ」と教えてくれたからです。ちょっとしたことなのですが、これも私たちの「寄り添う看護」の一つなのかもしれません。手術室ではマスクも帽子も被っていますから患者さんは私たちの顔を知らないことも多いです。でも術後に病棟を訪問して声を掛けて手を握ると患者さんが「あっ、この手よ!あなたが手術の時私の手を握ってくれたのね。私はこの手に助けてもらったのよ!」と言われたことがあります。その時はうれしかったです。今は入院されてから病棟への術前訪問しかできていませんが、手術が決定した時から周術期看護は始まります。患者さん、ご家族がより安心して安全に手術を受けることができるよう手術チームとして入院前から患者さんの状態をアセスメントし、介入できる体制を整えたいと考えています。そのためには、手術看護の質を向上させる取り組みを実践しながら多職種と連携、協働が必要になるのでキーマンになれる管理者になりたいと考えています。