診療科・部門

掲載日 : 2017年06月29日

診療科 <放射線治療科>

放射線治療科の日常

A: Qさんですね?どうぞお入りください。そちらは奥様(R)と息子さん(S)ですね? 放射線治療科医師のAと申します。よろしくお願いします。こちらは(がん放射線療法認定)看護師のBさん です。同席させていただきますが、よろしいですか?

B: Bです。よろしくお願いします。

Q他: こちらこそよろしくお願いします。

A: まずは、お話を聞かせていただきたいのですが・・・
1ヶ月前の検診で胸のレントゲンに変な影があるといわれたんですね?

Q: そうです。すぐにこちらの内科に紹介してもらいました。呼吸器内科を勧められて、C先生にいろいろ検査をしてもらって・・・

A: しんどい検査もあったでしょう?検査の結果は聞かれましたか?

Q: ええ、気管支鏡ってやつはかなりしんどかったです。あやしい影の一部を取って顕微鏡で調べたそうです。
CTとかMRIとかもしました。そうそう、PETっていうちょっとお高い検査もしました。
なんだか、悪い細胞があったそうで・・・

A: 病名は聞かれましたか?

Q: 肺がんって・・・

A: びっくりされましたでしょう?
今日放射線治療科にどうして来るか、C先生から説明ありましたか?

Q: ええ。今は少しは落ち着きましたが、まだ夜中に目が覚めることがあります。
C先生からは放射線治療と抗がん剤を組み合わせた治療法がよいと思われるので、放射線科で話を聞いてきて欲しいと言われました。

A: わかりました。そうですね、今日は肺がんに対する放射線治療について説明します。
今言われましたように、Qさんの病名は肺がんです。放っておくと命に係わる病気ですから、きちんとした治療が必要と思われます。
がんというと、手術という方法を思われると思いますが、現在のQさんの状況では、手術をすると取り残す可能性が高く、身体への負担の割りに効果が期待できません。
現時点のQさんの状況では放射線治療+抗がん剤治療というのが世界的に標準的な治療法です。“標準”と聞くとさらにその上があるように感じられるかもしれません。しかし、医療の世界では“標準治療”とは“科学的根拠に基づいて、もっとも効果があると判断された治療法”のことです。Qさんにはその治療法を提案させていただこうと思っています。

さて、そのうちの放射線治療についてですが、目的はもちろん“がんを治す”ことです。
具体的な方法ですが、1日1回で、1回の治療時間は10-15分くらいです。この間硬い台の上でじっとしておいてもらいます。息を止める必要はありませんが、あまり大きな呼吸もしないようにしてください。苦しくない程度に小さな呼吸を続けてください。実際に放射線が出ているのは10-15分のうちの2-3分です。放射線があたっても痛くも熱くもありません。何も感じません。
このような治療を1週間のうちには月曜日から金曜日まで続けます。週末と祝日があればその日もお休みです。つまり週5日の治療になります。Qさんの場合は、全部で30回くらいの治療を考えているので6週間くらいかかるような治療になります。ここまでに何かご質問はありますか?

Q: 6週間かかるということですが、途中で休んでもいいんですか?。6週間のうちにどうしても済ませておかなければならない用事があるのですが・・・

A: 治療期間のうちで1-2日程度であれば、結果に影響することはまずありませんが、1-2週もの休止期間が挟まると、“がんを治す”という目的が達成しにくくなるのに副作用は同じように生じることになります。これからお話しする副作用のために休むあるいは中止せざるを得ないことがまれですがあります。それは避けようがないので構いません。しかし、患者さんの都合で休むことはできるだけ避けていただきたいと思います。

Q: わかりました。

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    (註:放射線皮膚炎の1例)

  • A: Qさんの場合、病気は右の肺から真ん中辺りにあります。
    これに対して、身体の前から放射線を当てたり、背中側から当てたり、いろんな方向から放射線を当てます。
    実際にどの方向からどのように当てるかは、この後でやらせていただくCT検査の画像を使ってコンピュータ上でシミュレーションを行い、最も効果が高く、もっとも副作用が少ない方法を選択します。

    ここからは副作用についてです。手術も抗がん剤もすべて副作用があります。いずれもそれを正しく理解して早め々々に対処していけば、可能な限りそれを軽減し、受け入れることができると思われます。
    放射線治療の副作用ですが、大きく分けて1)治療中から終了後数週まで続くものと、2)治療終了後から生じるものがあります。まず1)からお話します。1)は1種類だけでなくいくつかの副作用があります。

    まずは(1)放射線があたった皮膚に生じる皮膚炎です。これは日焼けと同じことですが、一部水ぶくれができたりしてやけどに近いような症状を呈することがあります。冷やしてもらったり、必要なら塗り薬を出したりします。 これが原因で放射線治療が続けられなくなることはありません。

    次は(2)放射線があたる範囲に含まれる食道が炎症を起こす食道炎です。
    食道は食べ物の通り道ですが、食道炎を起こした患者さんは“のどの下のほうが詰まる感じがする”と言われます。本当に食道が狭くなったわけではなくて、食道がやけどすることで患者さんがそのように感じるようです。炎症がひどくなると、食べ物が通ると痛い感じがします。これも、冷たいもの(冷水や氷)を摂るようにしたり、必要なら飲み薬を出します。

    次は(3)痰が粘調になります。普段はサラサラした痰を無意識に出したり飲み込んだりしていますが、放射線 のために痰が粘調になると意識して出さなければならなくなります。以上が、1)の主な副作用で、軽度な ものを含めるとほぼ100%の方に生じますが、いずれも治療が終了するとだんだん改善していきます。

    (1)に関しては、色素沈着や皮膚の硬化が残ることがあります。ここまでで何か質問はありますか?

Q: 初めて聞くことだらけで、何がわからないかが分かりません。

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  • A: ごもっともです。そう言われる方はたくさん居られます。後でまた疑問がありましたら、お尋ねください。
    次は2)についてです。2)は放射線による副作用として数ヶ月かかっておこってくるような副作用です。
    これもいくつかありますが、まずは(4)肺炎です。放射線があたった範囲の肺が治療終了後6ヶ月くらいまでに肺炎を起こすことがあります。最初は微熱が続いたり、痰の絡まない咳や胸痛で始まることが多いようです。初期のうちなら飲み薬で回復することも多いですが、まれに入院が必要なくらい重症となることがあります。
    さらには、高齢の方や元々肺の機能が落ちている方はこの肺炎が致命的となることがあります。

    もうひとつは(5)心膜炎です。Qさんのように比較的多めの放射線が心臓の一部に照射されると、心臓を包ん でいる心膜という膜が炎症を起こすことがあります。具体的には心臓の周りに水がたまって心臓の動きが悪くなります。患者さんは動悸がしたり、息切れしやすくなります。これが生じた場合、溜まった水をおしっこにして出すような薬で改善することが多いようですが、薬で間に合わなくなると心臓へ向けて針を刺して管を入れるといった処置が必要になることがあります。

    今述べましたように、2)の副作用は重大な結果になることがありますが、生じる頻度としては5%未満と言われています。以上が放射線治療の主な副作用ですが、Qさんの場合は抗がん剤を使用すると思われますので、肺がんに対する効果が1+1以上の効果になることが期待される一方、上記の副作用もより長期間になったり、より強いものになったりするかもしれません。以上のことを御理解いただいて、放射線治療を受けるかどうか決めていただきたいと思います。何か御質問はありますか?

Q: やっぱり分からないところが分からないですが、肺炎は怖いですねぇ・・・

A: ごもっともです。しかしがんという重大な病気の治療ですので、どんな治療を受けるにせよ、あるいは治療を受けないという選択をするにせよ、命懸けであることは御理解ください。
また、命懸けであるからこそ、説明を聞いてすぐに回答することは適当ではないと思います。いったん持ち帰って、他の御家族とも相談し、皆さんが納得する治療を受けることをお勧めします。

R: お父さんそうしましょ。今は冷静に考えられないんじゃない?

S: そうだよ。姉さんとも相談したほうがいいよ。

Q: そうだなぁ・・・

A: そうですね。ただ、いつでも始められるように準備はさせてください。
具体的にはこれからCTの検査をさせていただきたいと思います。そのときに身体にマジックで数ヶ所印をつけさせていただきます。CTの画像を元に治療法を検討しておきます。
放射線治療に御承諾いただけましたら、またこちらに来ていただきます。その時は治療室に入っていただいて実際の治療台に寝ていただきます。
そして、計画通りに治療できることをレントゲンを撮影して確認できたら治療を開始します。翌日からは身体の印に合わせて位置を決めて治療をしますので、治療台に寝ていただく時間は最初にお話したように10-15分くらいです。
もちろん、準備をしたからと言って放射線治療を必ず受けなければならないということではありません。あとから、“やっぱり放射線治療は止めておく”という結論になっても結構です。よろしいでしょうか?

Q: わかりました。準備をお願いします。

B: では、こちらにどうぞ。

シミュレーション用CT室にて

K: こちらが、こうやってCTを撮影したり、日々の治療を担当する(放射線治療専門放射線)技師のDさんとEさんです。

D: Dです。よろしくお願いします。

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  • E: Eです。よろしくお願いします。
    さっそくですが、上半身を下着まで全部脱いでこちらに着替えてください。着替えられたら、こちらに横に なってください。はいそうです。
    両手を挙げて、頭の上にある棒を握ってください。後は動かないようにしてください。

    身体にマジックで印をつけます。少しくすぐったいですが、動かないようにしてください。CTの撮影ですが、 息を止める必要はありません。ただし、深呼吸のような大きな呼吸もしないでください。苦しくない程度の 小さな呼吸を続けてください。

(CT撮影終了後)

E: ご苦労様でした。身体に3ヶ所ほど印があります。消さないように気をつけてください。

Q: お風呂は・・・

濡れた位では消えませんので、お風呂には入っていただいて結構です。ただし、擦ると消えますので、 擦らないようにしてください。拭くときも押さえるように拭いてください。

Q: 分かりました。

ふたたび診察室にて、B(看護師)と

B: 少しは落ち着かれましたか?

Q: いろいろ説明していただいて、多少は理解できたので、その分落ち着いた気がします。

B: これから他の御家族とも御相談されると思いますが、思いつく疑問や御希望はありますか?

R: 放射線と抗がん剤で本当に大丈夫でしょうか?私の父も10年以上前ですが、肺がんで死んだんです。
手術したあと、再発して抗がん剤と放射線をしてもらったんですが・・・

B: それはお辛かった事とお察しします。Aも申しましたように、いずれにしても命懸けの判断となります。十分時間をかけて話し合ってください。その話し合いに必要な情報がありましたら私どもが提供させていただきます。
また、気持ちがおつらいようでしたらそれについてもお手伝いできる方法がありますので、申し出てください。10年前とは放射線治療の方法も、抗がん剤の種類や使い方も進歩しています。お父様のときよりは期待できると思いますよ。

S: さっきは聞き忘れたんですが、父は皮膚が弱いんです。すぐかぶれたりするんです。
放射線皮膚炎は大丈夫でしょうか?

B: かぶれと放射線による皮膚炎は直接は関係ありませんが、皮膚の状態を気をつけて診ないといけないかもしれませんね。Qさんも、皮膚の状態に限らずいつもと違うなと思ったことがありましたらあまり我慢せずに申し出てください。
治療中は、何事もなくても週1回はAによる診察があります。Dさん、Eさんと私は毎回治療に付き添います。もちろん、変わったことがあってすぐに申し出ていただければ、いつでもAによる診察が受けられます。

Q: わかりました。

翌日、診察室にて

Q: あれから娘とも電話で相談しました。
「お父さんが肺がんかもって聞いてからネットで調べてみた。私が信用するサイトでも同じようなことが書いてあったから、私もそれで良いと思う。お父さんの判断を尊重する。」
と言ってました。放射線治療と抗がん剤治療を受けることにします。

A: わかりました。それではこちらの同意書にサインをお願いします。
もちろん、途中で気が変わったらいつでも放射線治療を中止して構いません。

(サイン後に)

A: それではこちらへどうぞ。

治療室にて

D: それではこちらへ寝てください。
昨日と同じように、両手を挙げて棒をつかんでください。はい、そうです。

(位置を合わせてから)

D: これから確認のレントゲンを撮ります。昨日と同じで息を止める必要はありません。小さな息をしていてください。

(レントゲンを確認して)

D: 位置はよかったです。これから治療を始めます。息はそのままです。動かないようにしてください。

(治療が終了して)

D: ご苦労様です。これで1回目の治療が終了しました。
身体の印として消えにくいシールを貼らせていただきます。もう少しジッとしていて下さい。
昨日のマジックよりは消えにくいですが、やはり擦らないようにしてください。

B: 皮膚炎をひどくしないようにするためにも、シールのところだけでなく放射線があたっている範囲は擦らないようにしましょう。

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Q: わかりました。

A: ご苦労様でした。明日からはもっと簡単です。がんばっていきましょう。

以上はフィクションです。実際の診療とは異なる場合があることは御了承ください。


 

スタッフ紹介

樫本 和樹(かしもと かずき) 樫本 和樹
診療科 放射線治療科 樫本 和樹
役職 放射線治療科医長
卒業年 昭和61年
専門分野 放射線治療
略歴 日本放射線腫瘍学会認定医
放射線科専門医
放射線治療専門医
卒後臨床研修指導医養成講習修了者

外来担当医一覧

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